そう言われると曹操は一度
そう言われると曹操は一度しくじっているだけに反論出来なかった。袁術が閥の長なうちは孫堅も強気に出られない、袁術が居なければ荊州での抗争は私戦として罪を得ることすら考えられたから。庇護者の下に居るか、それを越えられるときに初めて反抗することが出来るようになる。
「私も強引に本営を進めるべきではないと考えていた。情報を集め、陣を固くし、成睾を攻略するべきであろう」
そう決定を下す。別に指揮権があるわけではない、だが和を乱すかのような動きをしようとする者はいない。また酒宴続きになる、そんな雰囲気が漂いかけた。
「それでは私が偵察をしてきましょう。安全期計算
敵の配置や規模が分かれば有利に戦える、袁術殿の密偵と内容を突き合わせればより鮮明になるので」
島介が腕組をして座ったまま、そんなことを言い放った。言葉こそ決定に従っているとの体だが、その実は軍を前進させるのとなんら相違ない。
「島殿、某の軍も地理を把握するために少数で同道させて頂いても宜しいかな」
「もちろんです、孫堅殿のお好きなように」
抜け道が現れたために、ここぞとばかりに乗り込んできた。面と向かって反対行動をしようとしているのではないので、袁紹も袁術も咎めることが出来なかった。なにより偵察行動は戦闘の基本、どうせするのだから志願者に任せるのが良い。
「盟主殿には諸侯らの調整という役目がある、私は本営にあって兵糧の手配をしておきたいが良いだろうか?」
「副盟主殿にお任せする」 正直面倒なことは誰かに丸投げしたかったので、倉庫番のようなことはしたくない袁紹が認めてしまう。これには曹操がやはり何かを思い出し眉を寄せた。
「長沙殿、後方のことは任せよ」
「かたじけない」
空を見上げた島介が「まだ明るい、これから行ってみるとしよう。それでは失礼」笑顔で退場する、勝手が過ぎるが戦功をあげた者の発言力はあがるものだ。本営の外に出て、敢えて少し突っ立っていると孫堅がやって来る。
親指を立ててクイッと後ろを指していた、そちらを見ると劉備と曹操もやって来る。
「おっと三大巨頭の揃い踏みとは参ったね」
誰にも聞こえないほどの小さな声を出すと肩をすくめた。
「不肖、劉玄徳も偵察に志願いたします。ご許可の程を」
「別に誰かの許可なんて必要ないさ、それぞれの意志で動けばいい。そう信じてるよ」
今度は曹操が近寄って来る「騎兵での偵察になるな、うちは百騎ほどしかおらん。劉備殿は十騎ほど、孫堅殿は?」揚州で兵を集めはしたが、騎兵もいなければ馬まで揃えるのも出来ずにいた。
「南陽で集めたので五百は居るぞ」
胸を張って応える。軍馬は維持にも育成にも多大な費用が掛かり、騎兵を持つには人員も用意しなければならないので五百は多いほうなのだ。
「では発案者でもあるし、島殿の指導に従うべきだろうな」
「まあ構わんが、全部で千騎位になるのだろうか?」
曹操が鼻を鳴らす、こんなところで誇るべきようなことではないが、隠そうにも既に明かしてしまって居るので仕方ない。
「うちの騎兵団だけで二千だよ、まあ若干は減っているがね」
「二千だって!」 孫堅が驚きを隠さずに声に出す。それはそうだろう、島介は恭荻将軍でしかない、どうやってそれを維持しているのかと言うことに繋がる。どうせすぐにわかることなので「ちょっと縁があってね、孫羽将軍の軍を継いだんだ。全て北狄の出で馴染まんだろうが、そこは勘弁してくれよな」順番が逆で恭荻将軍を賜ったならばわかるが、先に任官しているのだから巡り合わせとしか思えなかった。
発音が同じならば字面は気にしないのが中華のクオリティだ、諱を避けるなどもあるので誰も不思議に感じていない。一時間で軍営北部郊外に集合として解散する。
黒兵が一団となるが、島介にとって非常に想定外のことが起る。部将らだけを引き連れて一度話合いをしようと集まったところで素っ頓狂な声があがったからだ。
「おい玄徳じゃないか!」