Patricia3557

「何でって言われても……」親しくしている理由なんて

「何でって言われても……」親しくしている理由なんて

「何でって言われても……」親しくしている理由なんて、いちいち説明出来ない。もちろん、私の依織への恋心に気付いた唯一の人が久我さんだなんて、わざわざ青柳には言いたくない。「桜崎、そいつのこと好きなの?」「は?何でよ」「え、違うの?じゃあ、向こうに好きって言われてんの?あ、でもそれはないか。そいつ、七瀬のこと好きだったんだもんな」胸の奥の、更に奥深いところが、チクリとトゲが刺さったかのように痛んだ。でも私は、その痛みに気付かないフリをした。「私と久我さんは、そういう関係じゃないの。ただの飲み仲間。それだけ」「ふーん。でも今の桜崎、ちょっと可愛いけどね」
「は?何言って……」「そいつと電話で話してるとき、声が少し高かった。ついでに言うと、恋してる顔してたよ」そうやって言えば、私が動揺すると思って適当なことを言っているのだろうか。その手には、絶対に乗らない。青柳の言うことなんて、絶対に信じない。香港成立公司「じゃあ、俺は地下鉄乗るけど桜崎はどうする?」「私は……とりあえず今からこっち来るみたいだから、ここで待ってみる」「了解。あんまり振り回されないようにな」青柳は嫌な言葉を残して、地下鉄へ続く階段を降りて行った。残された私は、とりあえず久我さんが来るのを待つしかない。彼のやり方はものすごく強引で、待ってるなんて私は一言も返していないけれど、無視をして先に帰ることは出来なかった。すぐ近くのコンビニに入り、しばらく店内をブラブラ歩き回った後、大好きなカカオ多めのチョコレートをいくつか買った。そして外に出ると、ちょうど地下鉄の階段を上ってくる久我さんが見えた。「久我さん、こっち!」大きな声で呼び掛けると、久我さんはすぐに気付き私の元に駆け寄った。「待たせてごめん」「本当に、相変わらず強引で困るんだけど」こんな嫌みのようなことを言いたいわけではないのに、可愛さからは遠く離れたような言葉ばかりが飛び出してしまう。「ていうか、こっちに帰ってきたばっかりなの?」「そう。本当は明日の昼に帰る予定だったんだけど、急遽明日は朝から大事な会議が入ってね。それに合わせて、今夜帰ってきたんだ」「へぇ、忙しいのね」だったら一刻も早く自分の家に帰って、ゆっくり休めばいいのに。なぜ彼は、私に電話をくれたのだろう。その真意が、わからない。「はい、これお土産」そう言って久我さんが私に手渡した袋の中には、インスタントのラーメンが大量に入っていた。「袋のラーメン?え、これ……!」「それ、君が一番喜ぶかなと思って」一つ一つ確認すると、東京の有名店のインスタントラーメンばかりだ。間違いなく、北海道には売っていない。ラーメンが好きな私にとっては、何より嬉しいお土産だと感じた。「私がラーメン好きだってこと、よく覚えてたわね」「もちろん、忘れないよ。記憶力は良い方だしね」以前久我さんの友人が働いているバーで二人で飲んだとき、私たちはお互いのことを語り合った。恐らくあのときに、好きな食べ物の話もしたのだろう。あのときの一回限りの会話の内容を、彼が覚えていてくれたことが、私は思いの外嬉しかった。「ありがとう……凄く嬉しい」「珍しく素直だね」「何よ、素直になったら悪いの?」「いや、良いと思うよ」何がそんなに楽しいのか、久我さんはやけに上機嫌だ。何か良いことでもあったのだろうか。「でも本当に、こんなに沢山お土産もらってもいいの?久我さん、いくつか家に持って帰れば?」「自分の分は別で買ってあるから、遠慮しなくていいよ。それより、同期会は楽しめた?」「あぁ、うん。いつものメンバーだから、気が楽なの。依織と甲斐と、青柳と私の四人」