Patricia3557

「何のつもりで俺を狙ったんだい

「何のつもりで俺を狙ったんだい

「何のつもりで俺を狙ったんだい。」生き残りの前に回ってハンベエが尋ねた。「ひっ・・・・・・知るかいっ、お頭に殺して来いって言われたから、命を貰いに来たのよ。」襲撃者はハンベエの顔を見上げると、観念したものか足掻くのを止めて言った。「オカシラ・・・・・・ってのは何者だ?」肩に『ヨシミツ』の峰を乗せ、男を見下ろしながら、ハンベエが質問を続ける。「アカガネヨロイのドブスキー様だ。俺達程度を殺したって、お前は助からねえぜ。何たってお頭には五千人からの手下が居るんだ。まあ、恐ろしいお方の怒りを買ったと後悔しておくんだな。」アカガネヨロイのドブスキー? "「あのときはつい感情的になって 断られることも、もちろん覚悟している 険悪な雰囲気のまま食事を続けるのも嫌だったため さっきから余裕の笑みを浮かべて話す姿が気に入らなかった まだ飲み足りないけど、もう帰りたい" 知らない名だな。何で俺の命を狙う。」瞬く間に追い付いて、二人の背中を叩き斬り、今一人の足首の腱を斬り払った。背中を割られた二人は絶命して俯せに倒れ、残る一人はもんどり打って地を転がった。それでも、少しでもこの恐ろしい剣術使いから逃れようと足掻くように這って行く。「当節、アカガネヨロイのお頭を知らねえとはとんだモグリだな。ステルポイジャン軍が逃げ出した後は、このゲッソリナはお頭の天下よ。今や手下の野盗が五千人、ゲッソリナの闇の支配者だ。」「要は悪党共の親玉か。それで、何故俺の命を狙う?」「テメエは、昨日ゲッソリナで押し込みを働いてた連中を何十人もぶった斬りやがったろう。それがお頭の気に障ったんだろう。正義の味方ヅラして、俺達の仲間を殺したのが運の尽きよ。五千人の仲間を敵に回したんだ。命を諦めるんだな。」生き残りは足の傷の痛みに顔を歪めながら、憎々しげにほざいた。「ふっ。」ハンベエは少し嬉しそうに笑ってしまった。敵の目からはさぞかし人を小馬鹿にした傲慢極まりない表情に見えたに違いない。「余裕ぶってられるのも今のうちだ。仲間が必ずテメエをやるからな。せいぜい首を洗ってな。」「五千人ね。俺の仲間が何日もしない内に六万ばかり兵士を引き連れて、このゲッソリナにやって来るんだが。お前等こそ逃げ出す事になるぞ。俺を狙ってるなら、急げよ。」「ろ、六万だと。吹きやがって、何でオメエなんかにそんな大軍が。」「やれやれ、このハンベエの事を全く知らずに襲って来たらしいな。随分とオメデタイ奴等だ。」「おっ、オメエ一体何者だ?」「タゴロローム軍、いや王女エレナ軍かな。その総司令官のハンベエってもんだ。」「・・・・・・。」生き残りの襲撃者は真っ青になって座り込んでしまった。「さて、お前の処分だが、お前死にてえか?」ハンベエに言われて、男は急にドギマギした顔付きになった。ハンベエの容赦無い殺戮を目の前にしていた為、最早絶対に助からないと覚悟を決めていたらしい。そこへ急にこの血も涙も無さそうな剣の鬼が、命を助けてくれそうな様子を見せたものだから、半信半疑、おっかなびっくりの状態になってしまったのである。「どうなんだ?」「そっ、そりゃあ、命が助かるってんなら、そっちの方がいいに決まってらあ。」「なら、もう行け。俺の気が変わらないうちにな。それから、もしアカガネヨロイの奴に会うような事があったら、殺しに来るのを楽しみにしてるって伝えてくれ。」そう言ってハンベエは男の前から横によって道を空けてやった。男は素早く立ち上がり、無言でビッコを引き引き逃げて行ったが、数十歩行ったところで振り返って、「いい気になるなよっ、次は絶対殺してやるからな。」と捨て台詞を吐いた。「待ていっ。」そのまま去って行こうとする男の背中に斬り付けるようにハンベエの怒鳴り声が響いた。男はびくりと足を止めた。まずった、余計な負け惜しみはもっと遠くまで行ってから言えば良かったと大いに後悔していた。後悔させるほどにハンベエの怒鳴り声は凄まじかった。